泣いて笑って夢見る明日

嵐、宇宙Six、A.B.C-Zを中心としたJ事務所のコンサート、舞台活動のレポとオタ活情報

あつくはかない時間旅行~舞台「トリッパー遊園地」レポ

20年来の親友でありライバルでもあるA.B.C-Zの河合郁人くんとふぉ~ゆ~の辰巳雄大くんがダブル主演を務めたこの舞台。いままで何度もバックとして立ったことがあるだろう新橋演舞場で行われた公演を観劇してきました。

河合×辰巳の共演、新橋演舞場、という情報だけで最高レベルのエモさがあるこの舞台。一時期一緒に暮らしていたほどお互いのことを分かり合っている2人がどんな空気感を出すのかを楽しみしていました。

河合くんと辰巳くんは個性は違えど根本的には似ている2人だと思っていて。2人とも器用貧乏というか、お仕事に対してはドがつくほど真面目で考えて悩んで考えて悩んで…それでたまに突き抜けちゃって逆にわかりにくくなることもあって。でも必ず高いクオリティのものを安定的に届けてくれる2人。ジャニーズのお仕事から離れたこのトリッパー遊園地で彼らの引き出しからどこを出してどこをしまうのか、というところも注目ポイントでした。

舞台のあらすじ

2019年、ここは90年続く老舗の山ノ内遊園地。IT化が進んだ今の世の中に取り残され、社長である山ノ内マサヒロ(河合郁人)の一存で、リゾート施設ビルへの経営転換が進められている。遊園地で時代の変遷を見守って来た整備士の寅吉(榎木孝明)の勧めで、マサヒロがしぶしぶ遊園地のシンボルである観覧車に乗り込もうとすると、そこにマサヒロと瓜二つの男が現れる。男は太平洋戦争末期、南の島で戦死したマサヒロの親戚、山ノ内正彦。男に「身体を貸せ」と言われると、ほどなく勝手に体が動き出し、観覧車に乗ると、雷鳴が……マサヒロが目を覚ますと、そこには閉園しているはずの遊園地で人々が楽しんでいる。従業員もなぜか知らない顔ばかり。そんな時、空襲警報が鳴り響く。ここは、太平洋戦争真っ只中、1944年の山ノ内遊園地だった。マサヒロは、この遊園地で瓜二つの山ノ内正彦として生きていく。統制が厳しい戦時中でも、なんとか遊園地を運営しようとする経営者のマツジ(渋谷天笑)と妻のユキ(純名里沙)。戦争下の中でも経営を続けている遊園地、そして一向に自分の元に召集令状が来ないことに疑問を抱く、マツジの弟・ショウヘイ(辰巳雄大)。そして、遊園地を彩る活弁士トメ(いしのようこ)やその娘ハル(惣田紗莉渚)たちとの関わりから、マサヒロは遊園地のあるべき姿、人々が楽しめる場所の大切さに気づき出す。しかし、終戦間近となったころ、ショウヘイにも遂に赤紙が届き、マサヒロは遊園地を託される。ショウヘイが出征して数日後、鳴り響く空襲警報の中、遊園地とみんなを守ろうと奮闘するマサヒロの決断は……

公式サイトより) 

 

全体の感想

舞台を通して役者さんの人生を見ているような、それ自体が群像劇になっているような不思議さ。様々なバックグラウンドを持つ役者さんが挑戦的にでているのかな?と思うようなキャスティングだったため、個性豊かな面々が「トリッパー遊園地」という空間に集まってある一時期を共に過ごし成長しまた違う場所に旅立っていく物語とリンクしているように感じました。

話自体は非常に大衆演劇的というか、高齢者中心の全年齢向けヒューマンドラマ。新橋演舞場で滝沢歌舞伎や大型舞台しか見たことが無い人には「これ新橋演舞場でやっていいの?」と思ってしまうかも。

ただ、私は新橋演舞場で行われる通常の空席多めの歌舞伎公演や昨年の有頂天一座を見ていたおかげで、新橋演舞場にはこうゆう「誰もが気軽に見れる演劇場」の一面があるのを知っていたのですんなり受け入れることができました。それでも、明治座っぽい内容だなあとは思いましたが。

客席にはおばあちゃんや子供の姿もあり。普段から舞台を気軽に楽しみたい層があって、たぶん松竹の会員にはそうゆう人がたくさんいて、一定の割合でそうゆう人のための舞台を上演している。その舞台に河合辰巳を選んで貰ったんだなあと。いつものジャニ舞台からすると完全にアウェーだという印象でした。

不協和音を生み出すテーマ曲

オープニングからキャストが次々と登場して全員でテーマ曲を歌いあげます。この曲がとても怖くて私はオープニングから泣きました。遊園地が舞台なのでエレクトロニカルパレードのような明るい曲調がベースになっています。しかしサブリミナル効果のように戦時中の服装の役者や子供がところどころで出てきてその時だけ曲調がマイナーに変わるんです。ピエロを見ると狂気を感じる人がいると思いますがまさにそれ。キラキラした曲に隠れる戦争の悲しさ、恐ろしさがジワリと漂っており背筋が凍る思いでした。

背中で語るショウヘイの男気

辰巳くん演じるショウヘイは一本気で融通の利かないザ昭和の男。河合くん演じるマサヒロに何度も「頭カッチカチだな~」と言われるのですが、そのカチカチさが頭だけでなく腕や歩き方、表情の動かし方まで「カッチカチです!」を体現していてとてもよかった。カッチカチだけどその行動から心は優しい人だとわかるショウヘイ。言葉数も非常少ない中で遊園地に対する思い、家族に対する思い、愛する人への思い、子どもたちへの思いが背中から漂ってくるのがすごかった。背中で語るってこうゆうことなんだなと教えてもらった気がします。

空襲下でとったマサヒロの行動

現代からタイムトリップしたマサヒロは戦時中の遊園地の人々とのふれあいの中で少しずつ変化していきます。その中で、空襲下でマサヒロがとった行動がとても現代的だなあと思いました。守られて何不自由なく育てられてきた現代の若者であるマサヒロにとって、命を失うということがどこか現実的ではないのではないかなと。目の前にある親しい人達を今あるものを使って助けるのは当たり前で、その中に自分の命を計算していないという無鉄砲さがとても現代的。人のことは見えるからわかるけど自分のことは見えないからわからない。マサヒロが一人で突発的な行動をとったことが結局は過去の人間とは相いれないことの証明なのかもしれない。

河合辰巳のショータイム

河合辰巳コンビが白黒スーツでキレキレのショーを行う劇中劇がありとても驚きました。マサヒロとショウヘイにしては踊れすぎるだろうと。おそらくファンサービスかと思いますし、2人で踊ってるのを見て歓喜しましたがなんかすいません。えび担もふぉゆ担も舞台慣れしているのでアイドルだと思って無理にこうゆうコーナー作らなくても大丈夫なんですがなんかすいません。ただ、この舞台自体が実験的であり大衆的なので、こうゆうかくし芸大会みたいな一面があってもそうゆうものだと思えばありなのかなとも思いました。

最後に

新橋演舞場でやる舞台です!ドドーン!みたいな重みではなく、東京公演のあとに全国30都市を巡回公演して最後は東京に戻ってきますね!というような軽さが魅力の舞台でした。例えば各地の公民館で公演を行い、地元の小中学生が出演できるようなコーナーを作って、そうやって老若男女が気軽に見にこれるフレキシブルさを通じて戦争を学ぶという社会科見学的な一面ももつ。そうゆう良さがあるし、それができるしなやかさがあるカンパニーだったので次回は全国行脚はいかがでしょうか。

日頃キラキラ作りこみ舞台ばかり見ている中で、演劇の原点を思い出させてくれるような作品に出会えたことをうれしく思います。